![]() ![]() 早速、フィンランディアの聴き比べをしてみよう。 冒頭は、金管セクションのコラールだ。どの楽器にとっても鳴りやすい音域で書いてある。アタック、息のコントロール、音形の処理、演奏者の基本的能力をあからさまにする。セクショントしてのサウンドはどうか?曲想に応じた音楽的訴えはどうか? 後半は、学生指揮者とオケの合奏テクニックが聴けるだろう。有名なシンバルのシンコペーション難所はどうだろう・・。
最初に登場するのは、今から28年前1975年の第2回サマコンでの演奏。 指揮は、河原啓一氏。 冒頭、かなり遅めに感じるが、5小節目から大胆なテンポの動きを持ち、ルバートが生きている。ティンパニの音も効果的。一時、バラける部分もあるが、最後数小節の和音の解決感もまずます。最終コードを痩せずに鳴らし切っていれば、最高だったろう。演奏時間は51秒と最短になっている。 音程はかなり怪しく、荒い部分もあるが、フィンランディアの曲想にはマッチしてるので、十分魅力的だ。 後半、ティンパニに先導されて、シンバルを含むシンコペーションのアッチェレランドがすごい、気迫十分。今日的な演奏技術からすれば、中高校生レベルに近い「下手くそ」な音も聴こえてくるのだが、エンディングへ向けての気合と迫力に驚く。最終部のティンパニの「張ったり」も決まっている。オープニングだからなどという手抜きは、少しも感じられない。 この演奏は、上昇期オケの気負いと活気に満ちている。観光会館で本格的なサマコンをスタートした演奏会だったとのこと。後年、譜面ずら整理に重点が移っていった金大フィルにはない、「荒削りの魅力」だ。フィンランディアのイメージにぴったりの演奏。 ![]() ![]() 指揮は斉藤忠直氏。 年度と回数が合わないのは、途中何回かサマコンを中断しているからだ。 冒頭、全体に大人しく、メリハリは控えめ、全体トーンはくすんで低めに聞こえる。第2回での演奏に比べ、ハーモニー重視で、汚い音は聴こえない。反面、平板で、生々しい感じは後退している。 あまり迫力がないのは、会場のせいもありそうだ。全く響きのない厚生年金会館を意識してか、音が不自然に長く、音のスピード感が鈍い。特に冒頭の低音楽器のsfはインパクトが弱い。音楽背後にある、圧政の苦しみ、権力へ反抗などのテーマ性は、薄め。 ティンパニの音も、少し安っぽく無機的な感じがする。楽器が皮からプラスチック製ヘッドのものに、変わったせいだろうか・・。 冒頭部演奏時間は、52秒で、先の第2回とほとんど同じ。 後半、アンサンブルは最後まで見事だ。シンバル部分のアッチェレランドはほとんどない。安全運転とも言える。ヴァイオリン連続シンコペ前の金管のテヌートは押し付けがましく、自然でない。今日的な感覚からすれば抵抗があり、ちょっと古いスタイルか・・。これも、残響の少ないホールを意識してのことだろう。 県立音楽堂などでの演奏であれば、音は変わってくるのだろう。それでも、最終コラールの長いフレーズの盛り上がりは、満足感まずまず。 この演奏は、金大フィルで自分が演奏をした初コンサート。懐かしくもあるが、ちょっとガッカリきたのも本音。 ![]() その1へ戻る ![]() |