その3


 フィンランディアの聴き比べをしてみよう。

コンサート 会場 指揮 冒頭時間 最終部
1969 第30回定演 観光会館 山下成太郎  −
1975 第2回サマコン 観光会館 河原啓一  51秒 1分14秒
1980 第5回サマコン 厚生年金 斉藤忠直  52秒 1分11秒
1985 第10回サマコン 厚生年金 松浦正純  1分6秒 1分14秒
1991 第16回サマコン 観光会館 尾崎祐司 58秒 1分10秒
1996 第21回サマコン 観光会館 池田宗介 51秒 1分 5秒


 3番目は、さらに5年後の1985年第10回サマコンのもの。
指揮は、松浦正純氏。この年は、サマコンのすぐ後に京大との合演が行われており、その折にもフィンランディアが演奏されている。

 さて、この演奏は厚生年金会館で演奏されているのだが、音響がずいぶんと違う。よくわかる。残響が異常に豊富だ。第5回サマコンも同じ厚生年金会館での演奏だから、同一曲で比較してみるとよくわかるだろう。マスターテープの段階で、こうなっているので、ホール側が、気を利かして録音段階でエコーを追加しているのだと思う。

 厚生年金会館は、堤俊作氏も酷評しているように、残響が極端に短い、砂漠のようなホールだ。県立音楽堂が完成した今の時代では、オーケストラ音楽を演奏をするには不適な場所だ。演奏会パンフレットでも堤氏が音響の悪さを大々的に指摘していたから、ホール側もエコー付加の対策を採ったに違いない。
 演奏会場の履歴をみると、厚生年金会館の完成から(1977年頃)しばらくは、ずっとここが使われていた。しかし、この第10回サマコンの前後から、観光会館が復活している。

 良いオーケストラには、音響の良いホールがつきものであり、ウィーン・フィル、ベルリン・フィルしかりである。無理なく音を出すことが出来ることは、オケに良い結果をもたらすはずだ。県民の税金を使って出来た、県立音楽堂も、有効に使ってもらいたい。金大フィルは使えないのだろうか・・。


指揮の松浦正純氏 冒頭部は非常に遅い。第2回サマコンと比較して、15秒も遅く、1分6秒も掛けている。しかし、前述のように、これは残響が豊かなホールで演奏したから、自然に遅くなったのではない。会場でどのように聴こえてきたのかは不明だが、録音を聴く限りでは、ピッタリと決まっており、重厚この上ない、立派なものだ。好みからいうと一番好きなタイプの演奏。ティンパニの音も雄大に鳴り切っており、フィンランディアはこうでなくてはならない。
 ブラスは、音と音の間にちゃんと隙間を入れており、エコーの効果も手伝って、理想的な音形と音響空間を造り出している。エコーなしで(ホール実演を)聴いたら、どうだったのか興味がある。

     第10回サマコンフィンランディア

 後半、冒険はしないが実に安定したもの。ヴァイオリンの連続シンコペ部分への突っ込み、その後の金管の出など、ピッタリ決まっている。最後のコードへの「ため」がなく、テンポどおりに突っ込んでしまうところが、学生指揮らしい。それまでの重厚な演奏スタイルとかみ合ってないのはご愛嬌。この演奏はなかなか好きだ。




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