赤沢直人氏著作集



第40回定演パンフ ホルンパート紹介

パート紹介の催促に来た赤沢と、母にパート練習をすると言って集まった男達とのある晩の会話。
   −ジャラ、ジャラ、ガシッ‥・・・中略 −


赤: 斉藤さん、まず構成人員について・・・…。
斎: ダラ!! ほんなもんメンバーリスト見りゃわかるやろが。おい、辨谷それボンや。
赤; では、定演で一番聴いてもらいたい所は?
斎: 貴様!!ホルンが手抜きで吹く所があるとでも言わせたいんか?いい加減にせんと、お前のラッパ壊してキセルにすっぞ!!!
赤: (震えながら)最後に練習モットーについて。
辨: おい、それ、モット練習するという意味の熟語か?
斉: 理系のゴミは引っこんどれ。そうやなあ、寸暇を惜しんで学業と練習に生きるパートとでも書いてもろかの。ねえ神田大尉?
神: おい、留年生ばっかりやなんて書くなよ。
斎: 神田さん、それ当りや。大三元!! おい赤沢、お前最近練習しとるか?
赤: も、も、もちろんです。練習の鬼です。
斎: ほんなら、わしの代わりに麻雀やってくれ。わし明日テストやったわ.これで本日のパート練習を終るぞ。





第41回定演パンフ Tpパート紹介





○月○日 今日楽譜をもらった。なんという簡単な曲だろう。あほらしい、人をばかにしとるんか。
○月△日 パート練習に出る。他の金管のへたくそさにはついていけない。私の正しい音程が彼らにはわからないのだ。
○月×日 合奏に出る。他のパートも同じ。いやになる。
○月△日 指揮者が私に文句を言った。いやいや、私が正しいのだ。
△月△日 周りの人間の私を見る目つきが変わってきた。文句あるなら言えよな。
×月△日 石丸寛先生が来た。何度も何度もつかまった。あれー、おかしいなあ。
○月△日 後輩から何とかして下さいと言われた。生意気な。何とかするのはおまえの方だろ。
1月24日 不本意ではあるが、大学の学長に出てくれるなと泣いて頼まれたので、今、客席にいる。
世の中は難しいものである。







第42回定演パンフ Tpパート紹介



   怪談「トランペットのたたり」

 その日俺は誰もいない練習場で絶好調だった。遊びのつもりでバイオリンの教則本を引っ張り出してきて吹いてみると、すらすらと吹けるではないか。そして、バッハのパルティータを吹いてしまった時、俺は蒼ざめてしまった。重音まで吹いてしまったのである。その時、背後に人の気配を感じて振り返るとバイオリニストがいた。彼の反応を知りたくてもう一度バッハを吹くと、何故かいつものようにしかしか吹けない。それを見たバイオリニストは、その涼しげな目を投げかけて「おまえ、なんしとらんや。わしのもん勝手につこなまいや。」と言って教則本をとりあげてしまった。その夜、俺はすべてを理解した。誰もいない所では俺はまぎれもなく超天才なのである。そのことを証明するため録音してみたのだが、何も入らない。こ、これはたたりである。俺が今まで楽器を粗末に扱ったことによってたたられてしまったのである。許してくれ。俺が悪かった………。というわけで俺がトランペットの天才であるということを知っている者は誰もいないのである。あなた、この話、信じてくれますか。


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